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CEFR A2からB1への壁はなぜ高く感じるのか?

壁を越えるための5つの戦略

語学学習をしていると、レベルの上がり方が均等ではないことに気づき、あるタイミングを境に心が折れてしまうことがあります。特に多くの学習者が「A2からB1への移行」を“なぜか急にきつく感じる”という声を上げています。
学習の過程で避けては通れない、そのスランプの理由と乗り越え方について解説します。


目次

A2とB1の差は“できることの質”の違い

A2(基礎の完成)

  • 日常生活に必要な基本表現を理解・使用できる。
  • 短く、準備された文章で自己紹介や簡単な説明ができる。
  • 「旅行で困らない」レベル。

B1(中級への入口)

  • 身近な話題だけでなく、少し抽象的なテーマも扱える。
  • 簡単な理由づけや意見表明ができる。
  • 文章も会話も、自分で組み立てて即興で話す必要が増える。

ポイント:
A2までは「決まった型を覚えて使う」感覚ですが、B1では「自分の引き出しから材料を組み合わせる」力が問われます。


急に必要になる“即興力”

A2では覚えやすく短い例文を繰り返し使ってみるという学習法がメインですが、B1では、相手の質問が教科書通りではなくなってきます。そして、より長く、個人的で具体的な会話が求められてきます。
例えば:

  • A2的質問:「Where are you from?」(決まり文句)
  • B1的質問:「How is your hometown different from Tokyo?」(比較+説明が必要)

壁の正体はこの即興対応
準備されたフレーズ暗記ではカバーしきれない場面が増えるため、「知っている」と「使える」の差が露呈します。


語彙の“量”より“柔軟性”が求められる

A2からB1に上がるには、単語数を増やすだけでなく、

  • 同じ単語を別の文脈で使える
  • 言い換え(paraphrasing)ができる
    が必要になります。

例:

  • A2:「I’m tired.」
  • B1:「I feel exhausted because I’ve been working all day.」

この言い換えスキルが足りないと、表現が単調になり会話が続かなくなります。


心理的ハードル:自信の揺らぎ

B1に近づくほど「理解できないこと」や「言えないこと」が増えて見えます。
これは上達の証でもありますが、多くの学習者は「できない」が目立つ段階でモチベーションが下がります

例えば…

A2までは“外国語をしゃべってる自分”がカッコよく見える
B1に入ると“間違ってる自分”に気づくようになる
という現象です。


壁を越えるための5つの戦略

1. パターン練習+崩し練習

  • やり方例(1日10分)
    1. 教科書やフレーズ集からA2レベルの例文を3〜5個選ぶ
      例:「I usually go to the gym after work.」
    2. この文の一部を入れ替えて3パターン作る
      • I usually cook dinner after work.
      • I usually go to the gym on weekends.
      • I rarely go to the gym after work.
    3. 入れ替え後の文で即興的に1〜2文追加して話す
      → 「I rarely go to the gym after work because I’m too tired.」

ポイント: 「丸暗記」から「材料を入れ替える」感覚に移行するのがB1の鍵


2. 即興スピーキングの習慣化

  • 1日3分スピーキングチャレンジ
    1. タイマーを3分にセット
    2. 今日のテーマを1つ決める(例:「My favorite season」)
    3. メモなしで話し続ける
    4. 録音して自分で聞き返し、「詰まった所・同じ単語を繰り返した所」をチェック
  • レベルアップ方法
    • 最初は日本語で内容を考えてから英語に変換
    • 慣れたら最初から英語で発想する練習へ

ポイント: 毎日同じ時間にやると習慣化しやすい(例:通勤途中、夕飯後など)。


3. 言い換え力の強化(Paraphrasing)

  • 練習法
    1. 単語カードを1枚引く(例:「happy」)
    2. その意味を別の言葉で3つ言う(glad, pleased, in a good mood)
    3. それぞれを使って短文を作る
      • I’m glad to see you.
      • She was pleased with the result.
      • I’m in a good mood today.

応用:
ニュースやYouTubeの英語を聞き、「聞き取った表現」を別の言い方で言い直す。


4. 小さな成功体験を積む

  • おすすめ方法
    • オンライン英会話で「1トピックだけ話す短時間レッスン」(10分)
    • SNSや言語交換アプリで1日1メッセージだけ送る
    • 店員さんや観光客に英語で一言話しかけてみる

効果
短い成功を積み重ねることで、「話せた」感覚が脳に残り、自信が次の会話の燃料になる。


5. 入力と出力の比率を変える

  • A2までは入力(読む・聞く)7割、出力(話す・書く)3割でも伸びますが、
    B1を目指すなら出力5割以上シフト。

例:
30分のリスニング後に、必ず5分の要約スピーキングをする。
読んだ文章の内容を、友達に英語で説明してみる。


この5ステップを組み合わせると、「知ってるけど出てこない」現象が徐々に減って、B1に必要な即興力がついていきます。
実際、A2からB1まで半年で抜けた多くの学習者は、この“崩し練習+3分即興”を実践。確実に語学力を伸ばしています。


この壁を越えた先に見える世界

A2からB1への壁は、知識の不足というよりも「知識を即座に運用する力」への要求が一気に高まることが原因です。
この壁を乗り越えるには、暗記型の学習から、即興的・応用的なアウトプット練習へのシフトが不可欠です。

B1に到達したときには、見える世界がぐっと広がります。
次の会話で、「あれ、思ったより話せた!」と感じられる日が、その突破の証拠です。


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