ネイティブはCEFRで言うと何レベル?

どの視点で“自分の語学力”を捉えればいいのかを分かりやすく紐解く
外国語学習をしていると、「ネイティブはCEFRでいうとどのレベルなのか?」という疑問がふと頭をよぎることがあります。
一見すると“当然最上級のC2でしょ”と思われがちですが、この問いを掘り下げていくと常識がひっくり返ります。
専門分野ではどうか?
読めるけれど書けないケースは?
そもそもCEFRの“最上級”は何を指しているのか?
こうした疑問を辿っていくと、「ネイティブ=最強」という単純な構図が完全に崩れていきます。
「ネイティブ=C2」という思い込み
次のような考え方は、とても広く浸透しています。
- ネイティブは最強
- C2は最上級
- だからネイティブ=C2
しかし、これは必ずしも正しくありません。
CEFRのC2は「高度で専門的な言語運用」ができるレベルであり、精緻な意味操作、複雑な構造の理解、専門領域での言語活動などを求められる非常に高い基準です。
一方でネイティブは「自然習得者」であって、法律文書や学術論文を書きこなす能力まで保証された存在ではありません。
ネイティブの言語能力は“スキル別に凸凹がある”
ネイティブの言語能力は一枚岩ではなく、スキルごとに大きな差があります。
◆ リスニング:ほぼC2
日常的に膨大な音声に触れているため、精度が高いです。
◆ スピーキング:C1〜C2
自然なやり取りは強い反面、論理構築や説得力が問われる場面では個人差が大きくなります。
◆ リーディング:B2〜C2
読書習慣の有無で大きく変わります。
普段から本を読む人はC2相当の複雑文も難なく理解しますが、そうでない人はB2程度で止まることも珍しくありません。
◆ ライティング:B2〜C1
一般的なネイティブの中で、C2に届く文章を書ける人は少数派です。
法律家、研究者、作家など“書く訓練”を継続的に積んだ人に限られます。
端的にいえば、
ネイティブはスキルごとにB2〜C2の中でばらつくのが普通です。
CEFRは“ネイティブとの差”を測るためのものではない
「ネイティブと比べて自分はどれくらいか」という視点でCEFRを使うと、永遠に追いつけない構造ができます。
しかし、CEFRの目的は比較ではありません。
CEFRは
「自分が何をどこまでできるか」を明確にするための地図 です。
- B1で十分に仕事になる場面も多い
- 実用性が高いのはB2という研究もある
- C1で扱える情報量は一気に増える
- C2は“必要な人だけが行く専門領域”
というように、必要なレベルは目的によって異なります。
CEFRは、ネイティブを頂点としたヒエラルキーではなく、学習者が進むべき道を照らすための道具です。
実は学習者の方が強い領域もある
ネイティブは自然習得によって言語を身につけますが、学習者は体系的に理解し、構造を意識しながら習得します。
そのため、
- 文法理解は学習者の方が精密
- 認知語彙は学習者の方が豊富
- 論理的な文章構築はC1学習者が優勢
というケースもよく見られます。
学習して得た力は、ネイティブの自然習得では到達しづらい領域をカバーすることがあります。
ネイティブは“最強”ではなく“ひとつの言語使用者像”にすぎない
まとめると以下の通りです。
- ネイティブ=C2ではない
- ネイティブの能力はB2〜C2に分布する
- C2は一般的ネイティブには求められない高度領域
- CEFRは比較ではなく“能力の見える化”が目的
- 学習者は領域によってネイティブを超えることがある
あなたがどのレベルに到達したいかは、目的と使う場面によって決まります。
ネイティブの影を追い続ける必要はありません。
自分に必要な言語能力を、CEFRを使って冷静に見極めていくことが何より大切です。


